生真面目で、堅物で、おくて。
それがイルカの周囲からの評価であり、本人もそれを信じており、カカシもそう思っていた。
思っていたのだが。
イルカの持ち帰り仕事が終わるのを待って、ぼうっと愛読書をめくっていたカカシの肩が、突然、重くなった。
イルカが、肩に頭を預けている。
反射的にカカシは、その髪を撫でる。
「上忍に気付かせない移動スピードは凄いですね」
口から出るのはムードも何もない言葉で、目は頁を追ったままだが。
すりすり、とイルカは、カカシの胸に頬を擦りつける。
こうなると、カカシは印刷物を放りだすしかなく、ぎゅっとイルカの身を抱きしめる。
男の本能も、準備完了! を告げる。
というところで、イルカは離れていく。
「よし、休憩、終わり」
などと、あっけらかんと言って。
ここで無理矢理、寝室に連れこむと、えらい剣幕でイルカが怒るので、準備完了! を、待機、に沈めさせるために、カカシは余計なチャクラを使うことになる。
イルカは誘う気も、もちろん罪悪感も何もないのだ。
これを日常的にやられて、だが、寝室では恥じらいまくりで「俺、色事には、ほんと、うとくて」などと照れたように言われても、と、カカシはひそかに頭を抱えていた。
イルカ先生のこういうの、なんて言うんだろうな、とカカシは今日も、ぴったりくる単語をさがして、イチャイチャシリーズをひもとくのであった。
色めいてばかり考えるからわからないのであって、子供や動物を見れば、答など一発なのだけれどね。