カカシとイルカは初めて、互いに私服で待ち合わせた。
日曜日の昼間、公園の噴水の前で。ツッコミを待つまでもなく、デ―トである。
二人とも、その年齢の青年にふさわしいラフな格好だったのだが、イルカは、カカシの姿にぎょっとした。
正確には、口布のない素顔に。
武器だ、これは武器だ。いや、凶器だ。
イルカは思った。
戦闘の最中に、おもむろに口布を下げるに違いない。
こんな綺麗な顔をさらされたら、どんな敵でも、一瞬、ひるむ。
その隙に、雷切なんかで、ぐさっとやってしまうんだ。
ああ、なんて素敵なんだ!
「あの〜、イルカ先生」
カカシの、のんびりした声が、イルカを現実に引きもどした。
カカシは、胸ポケットから濃い色のサングラスを取り出した。
「すみません。額宛なしだと、人相も悪いし、光が眩しいんで」
「あ、どうぞ、どうぞ」
イルカは、強く頷く。
そうそう、そうやって隠してください!
サングラスを着用したカカシを確認したイルカは、また頭を抱えた。
だあ〜。隠れてない。ぜんぜん隠れてない!
美形、丸わかり!
むしろ、強調している!
このままじゃ、芸能人だと思われて、人が寄ってくるじゃないか!
「さ〜て。どこへ行きましょうかね〜」
呑気に考えているカカシの腕を、ぐいっとイルカは引っ張った。
「映画、映画を観にいきましょう。さあ、早く!」
とにかく暗いところに避難しよう。
観るのは、3時間を越すあれだ!
「イルカ先生、そんなに映画が好きだったんですか〜。実は、オレも好きで〜。映写技師資格を持ってましてね」
何やら講釈を垂れだしたカカシに適当な相槌を打ちながら、イルカは映画館に急ぐのだった。
上映中の3時間ちょっと。
イルカは筋を追うどころではなく、隣のカカシの顔に見惚れたままだったことは、言うまでもない。
その後、速攻で家に帰り、もっとお互いに間近で顔を見合う事態になったことも、また言うまでもない。