コール
 
「心配か」
五代目火影綱手に問われて、イルカは、いいえ、と答えた。
本当だ。もう、ナルトもサクラも、イルカが心配するような忍ではない。
嘘だ。彼らを引率していく隊長のカカシが心配だ。
 
サスケが里を抜け、ナルトが旅立った後、イルカはカカシと恋人同士になった。
恋人同士と称するにふさわしく、心も身体も、甘く切なく熱い関係だった。
だが、それ以上に、忍同士としての共感が強かった。
カカシは散った人たちをいつまでも忘れず、毎日、慰霊碑の前で佇む。
カカシは教え子をいつまでも案じて、毎日、扉の前でナルトを、サスケを、待つ。サクラの修行の様子を見守る。
「俺より子煩悩な人って、初めて見ましたよ」
イルカはそう言って笑い、カカシが任務で里を離れるときには、かわりに彼の日課をこなす。
いったい誰が、カカシをクールでドライだなどと評したのか。
契約で呼びだす忍犬にさえ、手製のマントを纏わせるような人なのに。
ひときわ情の濃い人なのに。
イルカには理解できたから。
イルカも喪ってきたから。
だから、心を重ね合わせて、恋人でいる。
 
可愛くて、愛しくてならない教え子との任務で、カカシがバランスを崩しはしないか。
イルカはそれを心配する。
諦めることなく、サスケを探しだして連れ戻そうとしているカカシが、無茶をしないかと心配する。
「成長とは不思議なものだな」
綱手が言った。
自来也が、心得顔で微笑む。
この人たちは、そうした全てをのりこえてきたのだな、とイルカは思った。
 
忘れないで。
わたしはいつでも、あなたを呼んでいる。
あなたはいつでも、わたしを呼んでいる。
 
 
 
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