紫煙を燻らせながら、アスマが言った。
「今更って気はするけどよ。カカシ、おまえ、なんでイルカがいいんだ?」
カカシは、そちらだけ外気に晒した右目をまん丸にする。
「どうして、好きになったんだ?」
からかうふうではなく、心底から知りたい、という顔でアスマはカカシを見る。
「イルカのどこがいい?」
三つ目の質問に至って、やっと、カカシは答える。
「そりゃあ、イルカ先生って綺麗だし、可愛いし。あ、見た目だけのことじゃなくて、中身もだよ? 声もいいし、もう、指先の一本一本まで……」
えんえんと続きそうな惚気を、アスマは手を振って切る。
「だから、そういう所を好きになったのか? 最初に好きになったのは、どこだ?」
アスマの問いに、カカシはこどものように首を傾げて考えこむ。
しばらく思案した後、おそるおそる、というように言う。
「イルカ先生はイルカ先生だから、じゃ駄目?」
アスマは、煙草を落しそうなほど、笑った。
カカシは、とにかくイルカが好きということが大前提だ、ということしか、わからなかったが。
イルカが、なぜカカシにほだされたのか、そちらは、なんとなく、わかったような気がアスマはした。