情忍

16歳で中忍に昇格したときに、うみのイルカは徹底した性の訓練を受けた。
当時から美少年ではなく、美青年に成長しそうもないことは、自分でも判断できていて不思議だったのが、かえってそのほうが敵の懐に入り込めるだろう、と情忍適正を認められたのだった。
朴訥とした容貌と誠実な話し振り、それでありながら、閨では思うが侭の快楽を相手に与え、溺れさせ、情報操作をし、ときに寝首をかく。
くの一以上にイルカは優れた情忍になる、と期待された。
しかし、イルカは、そうした任務を全くこなすことはなく今に至っている。
体を使うと言っても体力を使う、情報操作よりは切った貼ったの直接的な戦闘、それらを経て、アカデミーの教員試験に合格し、忍術講師としてこどもたちを怒鳴りとばす日々だ。
途中で、情忍適正失格を申し渡されたから、ではない。
イルカに性の教育を授けた教官が、イルカを気に入ってしまって、我が物としてしまったのだ。
無理を通して道理を引っ込めさせた、里でも権力中枢に近い場所に居る、里最強と謳われる忍者。
写輪眼のカカシ、はたけカカシが。
もっとも、イルカがその名と素性、顔を知ったのは、ナルトを託してから後のことだ。
幻術を施されていたのか、朝になったら顔も思い出せなかった。
名も知らず、ただ自分を抱く男を、イルカは「せんせい」と呼んでいた。
性の教育をほどこす教官だったから。

「や、あ。せん…せい」
長い黒髪を振り乱し、イルカは慣れた語でカカシを呼ぶ。
イルカの内に収められたカカシの雄が、ひときわ膨張した。
呼ばれて、欲望を滾らせているくせに、カカシは窘めるような声音で言う。
「違うでしょ。カカシって呼んで」
「カカ、シ…せんせ、い」
基本的に、イルカはカカシに素直に従う。
「もう。可愛いったら」
掠れぎみの声で言い、カカシは腰を激しく動かす。
「あ、ああ、ああっ」
イルカは、あられもない声をあげる。
声をおさえることを教えられたことは、一度もない。
カカシは、イルカの前を長い指で包む。
「一緒にイクよ?」
イルカは涙をためた目でこくん、と頷き、カカシの導きに任せる。
「ああっ」
カカシの指が促すままにイルカは精を放ち、ほどなくカカシもイルカの奥に射精した。

「はい。今日もたいへんよくできました」
互いに身を洗いながし、交換した清潔なシーツの上で、イルカを抱きこんだカカシは、イルカの額に口付ける。
「ほんとに優秀だね。やるたびに上達する」
「そうですか」
イルカは、いたずらっぽい目つきでカカシを見る。
「そんなに優秀なんだったら、俺、いい情忍になれたのに。カカシ先生が公私混同しなきゃ」
「先生」を強調してイルカは言う。
「いいんです。これで」
カカシはイルカの髪を撫でながら、真面目な顔をしてみせる。
「あなたは、今のままの、非情が掟の忍のくせに情けにあつい情忍で充分です」
イルカはくすりと笑い、言葉の意まで作りかえる我侭な権力者の、情人の首に、両腕を巻きつけた。

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