色、鮮やかな

カカシの指が、肌を這う。
身を、イルカは反らす。
ふと、目を開く。
視線の先には、鮮やかに彩られた紙風船があった。
情事にもつれこんだときに枕元に投げだして、そのままの。
アカデミーの生徒が、イルカに献じてきたものだ。
子供たちは、自分が夢中になるものを、必ず、イルカにも持ってくる。
同じように、夢中になれ、と言うように。
思わず笑いが零れそうになるイルカの口許をカカシの唇が覆った。
いくぶんか乱暴に、舌を絡ませてくる。
よそ見をしたイルカを、責めるように。
アカデミーの子供たち以上にカカシはイルカの心の動きに敏感だ。
そんな恋人の背に、イルカは腕を回した。
強く力をこめ、同時に口付けに応える。
恥らっていては、いけない。
躊躇いも、いけない。
カカシは、すぐに不安になる。
悩ませるな。
悲しませるな。
カカシだけを見つめていることを、イルカは、全身であらわす。
自分だけに、イルカの心が向かい直したのを察知したのだろう。
カカシのキスからも指先からも、責めるような色合いが消えた。
カカシは、本来、優しく愛撫する男だ。
優しく、水の中をたゆたうように抱く男だった。
頑丈な男なのだから、別にもう少し荒々しくてもいい、とイルカは、思うときがある。
また自分は、こんなにも優しく相手を抱いていいただろうか、と反省さえする。
抱くも抱かれるも、男は、カカシ以外を知らないイルカだが、女性とは、それなりの経験を済ませている。
恋情の末というよりは、互いに忍者として経験を積むためといった意味合いが強い、交合ではあったけれど。
カカシが、イルカの胸を、白く先端にいくほど細い指先で揉む。
「んっ」
イルカは身を震わせ、鼻から声を出す。
「ここ、好きだものね」
カカシが、赤い唇の両角を上げる。
「女より、感じやすい」
揶揄されるとおり、イルカは胸が弱い。
カカシにゆるやかに撫でさすられるだけで、官能が皮膚を粟立たせ、イルカの男性器を膨れさせる。
「ふうっ、うんっ」
そっと乳首を摘まれ、イルカは無意識に首を振る。
「女のこより、女のこ」
甘い囁き声を、カカシがイルカの耳に落とす。
「カ…カシさ…んが、そうっ、したの、に」
こんな身体ではなかった。
イルカは、こんな身体をしてはいなかった。
「そう？　じゃ、ま、責任とって、イルカのいいように、したげる。どうしてほしい？」
ゆっくりとイルカの胸を撫でながら、カカシが涼しい顔で言う。
イルカは、次の愛撫を、己から求めなければならない。
「……舐めて」
「うん」
カカシが、イルカの胸に顔をおろした。
小さな突起を、カカシの唇が包む。
「あ、ん」
イルカは、喘ぎでしかない声をあげる。
目の先に、また、紙風船が映った。
色、鮮やかな。
こどもの呼気でふくらんだ。
イルカは目を閉じた。
もう、何も目に入らないように。
自分自身が、カカシの呼気で、色、鮮やかに彩られる存在になるために。

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