迷惑
「迷惑なんです」
はたけカカシが横たわる寝台の脇で、持ってきた洗濯物をえり分けながら、ひどく不機嫌な声で、うみのイルカは言った。
「うん。ごめんなさい」
素直に、カカシは謝る。
「迷惑なんです」
もう一度、イルカは言った。
ナルトを介して知り合い、距離を縮め、諍い、さらに距離を縮め、付き合うようになった。もう三年になる。
その間も、大きな任務や演習で、カカシが写輪眼の酷使によって寝込むことはたびたびあった。
互いの激務の隙間をぬい、休暇を合わせ、やっと立てた行楽の予定が、カカシの入院で潰れることも一度や二度ではない。
「俺、温泉が大好きで、楽しみにしてたんです。紅葉を見ながらの露天風呂」
イルカは、ぶすっとした顔で言う。
「あれ、それは期間を短くして、イズモやコテツと行ってきたんじゃなかった?」
「行ってきましたよ」
イルカの表情は、趣味を楽しんできた人間の物ではない。
「つまんないんです。一人で行っても、あなた以外の人と行っても。綺麗なものはあなたと一緒に見たいし、美味しいものは、あなたと一緒に食べたい」
一気に言って、イルカは怒った顔で、カカシを見る。
「ほんとうに迷惑です。俺をこんなふうにして。早く、元気になってください」
「うん。ごめーんね」
イルカとは正反対のとても幸福そうな表情で、カカシは心のこもらない謝罪をした。