メルヘン

はたけカカシには、ひどく現実的で前向きな部分と、理想的で空想的な部分が同居している。
戦う男だからかもしれない。
あまりにも過酷な、生と死のやりとりを日常とするなかで生きのびていくには、甘く、きらびやかな夢が必要なのだ。
カカシまでとはいかなくても、自らが戦う男であるうみのイルカは、それを理解する。

「あなたはね、嵐の夜にオレを助けてくれた人魚姫なんです。オレに会うために、声を失って足を得た。オレはね、ちゃんとあなただってわかります。愛するなって言われたって、あなたを愛します。だから、あなたは海の泡になったりなんかしない。ずっと、オレの隣で、オレと愛しあって、笑っていてくれるんです」
「水浴びをしているあなたが、あまりに美しいから、オレはあなたの衣を隠してしまいました。あなたは、しょうがないなあって、苦笑して許してくれました。どこかにね、羽衣は隠したまんまです。実は、あなたも隠し場所なんかわかっているんですよ。でもね、取り出さない。ずっと地上に、オレと一緒にいてくれるんです」
「オレは玉手箱も開けません。戸の向こうも覗きません。だから、あなたはずっと、オレのそばに居てくれる」

カカシのメルヘンは、ラストがいつも同じだった。
いつまでも、いつまでも、二人は幸せに暮らしました。
最初からそう記してある物語は選ばず、悲しい結末のものばかり、何かに挑むように、語りかえる。

赤ん坊が母の乳をせがむように、イルカの平らな胸に、カカシは吸いつく。
乳首を噛み、舌で転がし、唾液をねぶらせる。
「あふっ」
長い黒髪を揺らし、イルカは甘い息を吐く。
カカシの指は、唇は、イルカの全身をくまなく辿る。
イルカの秘所も同じだ。
指を挿れ、唾液でぬめらせる。
「あ、ん、カカシ、さん、もう…」
イルカは銀色の頭を両手で押さえこみ、自分から足を開いて、カカシを呼ぶ。
カカシは、赤く濡れた唇を笑いの形にし、滾った雄を、イルカの腰に埋めこむ。
「ああっ」
あまりの圧迫感に、イルカは悲鳴をあげる。
思考力など、無い。
イルカは、カカシを受け入れる容れ物になる。
締めつけ、自分から腰を動かし、イルカはカカシの容れ物になりきる。

イルカはカカシのメルヘン。
いつまでも、いつまでも、二人は幸せに暮らしました。
戦う男に必要なメルヘンを抱きしめて、イルカとカカシは眠る。

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