「俺、動物とこどもにはモテるんですよ」
焼いたサンマをのせた皿を卓に並べ、イルカが嘆息する。
「他にもモテますけどね。なぜ、嘆くんです?」
座っていたカカシは、不思議そうに、下からイルカを見上げる。
「ああ、その目!」
イルカは胸でバッテンを作る。
「帰り道に、野良猫がいるんですよ。一昨日、俺の足元に寄ってきて、そのときは、猫好きらしいおばさんが連れてったんですけど、今日もいて。足に擦り寄ってきて、にゃあん、なんてか細い声で鳴くんです。今のカカシさんみたいに、物凄く可愛らしく見上げてくるし! ここじゃ猫は飼えませんし、うちにはカカシさんがいるし。もう、走って逃げてきました」
カカシは、軽く首を傾げる。
「イルカ先生て、買い物したもの、みんな通勤鞄に入れちゃいますよね? 魚でも肉でも。一昨日も、魚でしたよね? 鞄に、入れてませんでしたか?」
「……ああ!」
一拍の間を置いて、イルカは頷いた。
いただきます、を、しながら、やっぱり上目遣いでイルカを見ながら、カカシはのったりと言う。
「猫と一緒にされるのは遺憾ですが、どさくさに紛れてほめられたような気もしますし、オレにモテてるだけで、良しとしてくれません?」
自分の発言を振り返ったのか、カカシの視線がきいたのか、顔を赤くさせたイルカだった。
猫が寄ってくる鞄には、噴射式の消臭スプレーをかけた。
しかし、動物、こどもどころか、イルカは気づいていないけれど、彼がモテるのは事実なので、そういうのも寄ってこないように、フェロモンを消すスプレーがあればいいのになあ、と、しゅっしゅしながら、カカシは思った。