「オレ、ね。眠るのがキライなんです」
唐突に、カカシが言った。
「は?」
イルカは、妙な声を出してしまった。
寝てばっかりの男が言うことだろうか。
「夢を見るから」
カカシは続けた。
「いやな夢を見るから、眠るの、いやなんです」
その瞳は、切ない色を含んでいた。
イルカは、からかいの言葉を失った。
幼い頃から忍として任務をこなしていた。
S級の任務ばかりこなしていた、元暗部。
そんな男が見る夢は、どんな夢なのだろう。
「だからね」
にっこりと、カカシは笑った。
「眠らないですまさせてくださいね」
カカシは、イルカの腰に手をのばす。
「けっきょく、そっちですか!」
響くイルカの怒号にも、屈するカカシではない。
「眠って見る夢より、いい夢、見させてあげますね〜」
「あ、悪夢だあ〜」
イルカの抵抗は、なんなく封じられた。
洗っても洗っても、手から赤い色が消えない夢。
何度も何度も繰り返される、金髪の男が死んでしまう夢。
生で掴む、人の命の感触。
大キライな自分。
あなたの側にいたら、そんな夢はもう見ない。
夢のなかで泣くことは、もう、ないから。