一見ホスト系優男、実は戦闘のスペシャリストである特別上忍ゲンマに、イルカは呼びとめられた。
すわ、戦か? と身構えたイルカだったが、話題はなんてことのない世間話だった。
とある男女が結婚するのだと言う。
「ええ? 言っちゃあなんですけど、あの男、薄っぺらい知識をひけらかして頭よさそうに振舞ってるだけの、計算高い実力の無い奴ですよ?」
「それよ。彼女は、底の浅いぺらっぺらの男「でもいい」、じゃなくて、そういう男が好みなんだとよ。まさに理想通りなんだと」
「へえ。いろんな好みがあるもんですねえ。それでまた彼女が…」
「おうよ。アルマジロかオオアリクイかって容姿だわな。で、野郎は「それでもいい」じゃなくて、そういうのが理想だったんだと」
「へえええ。蓼食う虫も好き好きと言いますが」
「似合いの相手がいるってことだわな」
と結んで、世間話は終わった。
職務をおえてイルカが自室に戻ると、首まわりがのびてウエストが緩んだスウェットで、寝転んでイチャパラを読んでいる上忍がいた。
里最強の、写輪眼のカカシと二つ名を持つとは思えない、生ゴミの袋の口をきゅっと縛って燃えるゴミの日に出したいような姿で、イルカはわけもなく腹が立って、上忍の腹に軽くジャブを入れた。
さすがに、だらけてはいても腹筋の鍛えあげられたかたい腹だった。
なんだか、それさえも頭にきたので、イルカはもう一発、お見舞いした。
「いきなり、なにするんですか〜」
いわれのない暴力に、涙目で訴える男を、イルカは無視した。
そして、夕食はサンマの塩焼きと茄子の味噌汁にした。
上忍の機嫌は、とっくになおっていた。
比翼連理と謳おうと、割れ鍋に綴じ蓋と言われようと。
お似合いはお似合い。