おべんとつけて
 
決してラッキーではない生い立ちのカカシだけれど、愛情はふんだんに与えられていた。
彼の父は最期まで彼を愛していたし、三代目や三忍(大蛇丸でさえ)もカカシを可愛がっていた。
四代目に至っては、人が溺愛という言葉の使用に躊躇うことがないほどであった。
カカシの頬についたご飯粒を、キスするように取って、そのまま食べてしまう、なんて光景が当たり前だった。
と、アスマは思い出していた。
イルカが、再現フィルムみたいに、そうしているのを見せつけられて。
「カカシさんたら、ほんとにだらしないんですから」
「ん〜、なんでか付いちゃうんですよね〜」
視線を逸らしたくて、アスマが隣の連れを見ると、その白く滑らかな頬に米粒がついていた。
「おまえ、美人の姐さんがだいなしだぜ。おべんとつけてよ。面倒くせえな」
唇を寄せることはしなかったが、指で取ってそのまま口の中に入れた。
紅は物も言えずに真っ赤になり、カカシとイルカは目を最大限に見開いたまま硬直していた。
おや、初めて見せつけられる気持ちがわかったらしい、とアスマはおかしくなった。
そして、やってしまうほうの気持ちも理解したのだった。
 
 
 
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