彼らはまとめてイノシカチョウトリオと呼ばれていた。
初めての前線勤務にそろって緊張していた。
直接の指揮官は、三忍さえ霞むと言われる木の葉の白い牙はたけサクモで、憧れと畏怖でますます固くなっていた。
任務には厳しいがサクモ自身は気さくな男で、先年こどもを持ってからはますます滋味が出たとされているが、イノシカチョウからすると、やはり怖い。
そして、やってしまった。
基本的なトラップを失敗したのだ。
部下苛めなどする上官ではないが、叱責は免れ得ない。
「任せろ。おれに考えがある」
そう請け負ったのは、「シカ」の奈良シカクである。
彼は戦略戦術を立てることに優れていた。
まずは三人でひたすら謝る。
とりあえず黙って叱られる。
反省の弁を述べたあとに、すかさず付け加える。
「ところでサクモさん。カカシくん、もうだいぶん大きくなりましたよね?」
その一言で、確かに説教はさっさと済んだ。
かわりに何枚も連なったおさな子の写真を見せられ、えんえんと親ばか語りに付き合わされる羽目になったのだった。
策士、策におぼれる。この意を身をもって知ったシカクであり、イノシカチョウトリオだった。
そんな彼を知る三人には、その後のサクモの行動と悲劇は理解できないものだった。
だが、さらに年月を経て、またも三人そろって親になって、サクモに共感できるようになった。
えんえんと親ばか語りをする気持ちも。
子を持ったが故に殺せなかったことも。
そして、その子を置いていってしまう心情も。
ほとんどの者がその名を忘れた頃になって、父親であるイノシカチョウトリオは慰霊碑にそっと詣でた。
木の上に立ってみると書いて親。
どこまでもどこまでも、木の上に立ってこどもの行く末を見守るのが親。