アスマはうんざりとしていた。
紅もしかり。
ガイは聞く耳をとうに失って、ヒンズ―スクワットを続けている。
「でさ〜、オレは言ったのよ。
そんな服を着たら、イルカ先生、ますます可愛くなって、変なのが寄ってくるから、買うのやめなよって。
そうしたら、イルカ先生、怒っちゃってさ〜。
夕飯のウインナ―、タコさんにしてくんないのよね。
いつもは、何も言わなくても、タコさんにしてくれるのに」
上忍たちが黙って聞いているのは、友情からでも、話者を尊敬、あるいは恐れているからでもない。
また、我慢大会をして、忍耐力を養っているわけでもない。
変に遮ったり、反論したりすると、さらにヒートアップすることを、経験から学んでいるだけである。
ここで逃げだして、家まで式を飛ばされ、鳥の口からえんえんと、一方的に語られてはたまらない。
「だいたい忍服で、あれだけ可愛いんだからさ、何を着ても可愛いに決まってるんだよね、イルカ先生は」
ちなみに、イルカは180になりなんとする成人男子で、どとらかといえば無骨で、もさっとしたタイプである。
しかし、賢明な上忍たちは、決して口を挟まない。
「あ、そろそろ、イルカ先生の受付が終わる〜。じゃあね〜」
言いたいことだけを言い、写輪眼のカカシは、そそくさと席を立った。
カカシが去ったあと、アスマは深深と煙を吸った。
紅は、大きく息を吐く。
ガイは、おもいきり伸びをした。
「こんな拷問を日々、受けにゃならんほど、おれらは悪いことをしたんかねえ」
アスマがしみじみと言う。
「うむ。前世で軍人だったりすると、現世で理不尽な目に遭ったりするから、気をつけなければならんらしいぞ」
ガイが、重々しくのたまう。
「どうやって気をつけるんだよ!」
アスマが声を荒げ、紅が再び嘆息する。
「お祓いでも受けようか」
その紅の提案を笑いとばす者はなかった。
後日。
木の葉神社で、そろってお祓いを受ける上忍たちの姿があったのだった。