木の葉崩しのあとアカデミ―は休校となり、イルカも任務に出ていた。
眠りの森の美人であった恋人も、目が覚めるなり、こき使われている。
気分ばかりが高揚し、肉体の疲労は蓄積されていく。
生徒に怪我がなく守り抜いたのは誇りだが、三代目の葬儀以来、誰の顔も見ていない。
ああ、恋人の顔さえ、見ていない。
鉛のように重くなった手足を引きずりながら、イルカは里の通りを歩いていた。
とにかく、深く眠りたい。
背後から、高い声がイルカを呼んだ。
「せんせーい」
とりわけて幼く、木の葉丸たちとは違った意味で、イルカを困らせてばかりいる生徒だった。
やれやれ。今、無理難題をふっかけられたら、俺は本気でキレるな。
内心の思いを押さえ、生徒と同じ目の高さに屈む。
生徒は、折り紙で作った手裏剣を差し出した。
「これ、おれが作ったんだ。せんせい、任務に持っていって。アカデミ―が始まったら、おれ、強くなって、せんせいを苛めた奴、やっつけてやるからね」
イルカは、そのまま生徒を抱きしめて。
泣いた。
後に、他の男の胸で泣くなんて、と恋人は、大人気なく拗ねた。