異星嫁が来た!

幸谷荒野、読み方は、こうやあらの。
通称、コーヤコーヤ。
俺である。
この春、高校に入った。
誕生日が来たら、十六歳になる。
まだ十五歳。
父母と郊外の一軒家、ごくごく普通の家に住む、自分で言うのもなんだが、すべてが中の中だ。
けど、別に世界が滅びてしまえとも思わないし、バイクの免許もねえ無免許で、ロボットなんて運転したくねえし、でも、アニメやゲームのなかでは、主人公になりきってしまう、言いたくはないが、普通の男子、だ。
いや、普通、だった。過去形だ。

だって。

部屋に、ある日、突然、来たのだ。
全裸の異星人が。

これがさ巨乳のロリ顔なら、俺、マンガの読みすぎ? で、すむのだが。
そいつ、俺より身長も高い、立派に地球人の成人の身体をした、男だったから。
俺の願望による妄想でないことは、断言できる。
そいつ、言いやがった。
俺の部屋に降ってきて。

「私がおまえの嫁だ」

なんだか、もう。
もし妄想だとしても、夢だとしても。
どこから、つっこんでいいのか、わからない。

異星人の名前は、オデッセイというらしい。
自分で名乗った。
えっらそうな地球語、というか、日本語、というか、このへんの言葉で。
ファンタジーに出てきそうなちょっと格好いい名前な気がして、悔しいから、どうしても、呼ばなきゃならないときは、オットセイ、と呼んでやっている。
俺の部屋に、居着きやがったのだ。
この男。
というか、このオットセイ。
全裸で出現しやがったから、立派な、ええ、もう、ほんとにご立派な男であることは、わかっているのだが。
コイツ、俺の母ちゃんの前では、嫁ぶりやがる。
か弱い振りまで、しやがる。
「お父様、お母様」
なんて、気持ち悪いってえの!
しかもさ。
なんというかさ。
顔は綺麗だからさ。
ほんと、アイドルというより、アニメかなんかレベルに綺麗なんだよ、この野郎。
諸悪の根源らしい、俺の親父(バーコード頭)は、上手に現実逃避しながら、受けいれてるし!
なんだよ、ほんと、なんなんだよ!
世界の悪と戦うとかじゃなくて、俺の普通の高校生活返してくれ! と叫ぶ日が自分に訪れようとは。
俺、何か、ばちが当たるようなこと、したんだろうか?

…………

「こーやは、あたたかいな」
そう言う、オットセイの身体のほうが、あたたかかった。
「父上は、体調が思わしくないと、身体が冷たくなるのだ。私は、父上が、このままもう、あたたかくならないのではないか、と、必死であたためた。私には、父上しかいなかったから」
泣きそうなのに、笑うなよ。
おまえは、いつものように、えっらそうな顔のほうが、似合うって。
なんだ、なんだよ、俺。
なんで、オットセイを慰めなきゃいけないような気になってんだよ。
なんで、オットセイの背中に手を回してんだよ。
「今は、俺がいるじゃねえか」
口!
何を勝手に、言ってるんだよ。
けどオットセイの身体を包んでる俺の手も、ちっとも嫌がっていなかった。

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