おかえりなさい、と男たちへ
449話ネタバレ小話、カカシ復活記念

炎は、鮮やかに燃えていた。
そのわりに、熱を感じないのは何故だろう。
そう思いながらカカシは語を継いでいく。
サクモが言う。
「お前もそれなりに大変だったようだな…」
「それなり、はないでしょ。すごく、かなり、大変だったよ」
カカシは憤慨する。サクモが笑った。
「お前の話の八割、どうやってイルカ先生に振り向いてもらうか、だからな」
「父さんみたいに、そういう苦労をしたこと無い人には、わかんないよ」
カカシは、こどもの膨れっ面になる。
「お前の母さんのときには大変だったぞ」
真顔で、サクモは言った。
カカシは母の顔を覚えてもいない。
だが、父がどんなに母を愛し、悼んでいたかは理解している。
でも、その母の所にも行かず、ここで、ずっと。
ここで、ずっと。
ずっと。
カカシは言葉を重ねていった。
「今なら父さんを理解できる…。皆のために掟を破った父さんをー今は誇りに思う」
大きく目を見開いて。
ありがとう、とサクモは言った。
別れ際には、母さんにやっと会えるよ、と微笑んでいた。

それは黄泉の国の手前で真実、父に会ったのか。
己の深層意識との対話だったのか。
カカシには判別がつかない。
だが、「おかえりなさい」とイルカが抱きしめてくれたとき。
父も母の元に行って、同じ言葉をもらっている、と信じた。

おかえりなさい。闘う男たち。

闘う魚(アントニオ鰯)@海空教室
二〇〇九・六・七(日)

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