カカイル前提ミナサク 『黄金の稲穂。』 第五話。 |
印を結んだ。身体に浮遊感を感じる。チャクラも多大に消費した。実際、立っているのがやっとの状態だった。 だが、何処に立っているのは分からない。分かっているのは、先程いた場所と違う場所に立っているコトだった。 気が付けば、夜道で外灯の下に立っていた。光りに誘われるように飛んでいる虫を見つめた後、術が成功したのかまだ分からないミナトは、フラフラした足取りで歩き出す。 「…この道は知っている。いつも通っていた道だ。この道を真っ直ぐに行けば、サクモさんとカカシの家がる……術が成功したんだ!」 ミナトの身体に力が戻ったような気がした。急いでサクモ達の家へと向かう。玄関まで走れば、居間に灯りがついている。 ミナトはその先にサクモがいると信じて、玄関の扉に手を伸ばすと、中から人の争う声が聞こえて来た。その声を聞き、忍びとしての習性を思い出したミナトは気配を殺して、玄関の扉を開き、中へと入っていく。そして中にいる人物を知り、驚きを隠せなかった。 「お前がいるから…!」 その叫び声を聞き、気配を殺すコトも忘れ、ミナトは急いで居間へと入っていく。すると、そこには、踞っているサクモと立ってサクモを見下ろしている波風ソヨグがいた。 「サクモさん…!と、父さん…!」 ミナトの声に、ソヨグは振り返る。 「……お、お前は…ミ、ミナト…?何だ?その恰好………」 ソヨグはミナトの姿を見て、驚きを隠せない。ミナトは四代目火影の羽織を身につけ、その場に立っていたのだ。しかし、ミナトはソヨグを気にしている余裕はなかった。ソヨグの足下にサクモが血を流して倒れていたからだ。 「どういうコトだ!?どうして、父さんが…!サクモさんっ!しっかりして下さい!今、医療忍術で…!」 ミナトがサクモを抱き抱えると、胸にクナイが突き刺さっている、急いでチャクラを練ろうとした。しかし、時空間忍術で大量のチャクラを消費したミナトにはもうチャクラが残っていなかった。 「……サクモさん!」 「………ミ……ミナト……か…?」 抱き抱えられたサクモが眼を開けて、ミナトを見つめた。その横でソヨグが立ったまま声を出した。 「コイツはな、死んで当然だ!任務を放棄したんだろ?いいか、ミナト、コイツはお前に悪影響しか及ぼさねぇんだ!死んで当然だ!」 その言葉を聞き、ミナトは振り返る。 「アンタか…!アンタがサクモさんを…!」 憎悪に駆られたミナトはポーチからクナイを取りだし、ソヨグに投げつけようとした。それをサクモが止めに入る。 「……サクモさん!」 「……良い…良いから、コイツは逃がすんだ…ミナト…!」 ミナトの腕を掴んで、サクモが必死に止めに入る。ミナトはそれに首を振って答えるがサクモ何度も同じ言葉を繰り返す。 「でも……っ!」 「良い…良いから…」 サクモの言葉を聞き、ミナトはあるコトを思い出す。サクモが自死した日、ソヨグは火の国の国境で野犬に襲われ、遺体で発見されたハズ。それをミナトは思い出した。 サクモの言葉に従い、ミナトはクナイを降ろす。それを見たサクモがソヨグに声を掛けた。 「……アンタは、もう木の葉から出て行け…!もう…もう二度と、ミナトに近づくな…!」 サクモが睨み付けながらソヨグに叫んだ。それを見た、ソヨグは震える身体を精一杯動かして、逃げるように出て行く。ミナトはそれを黙って見つめるしかできなかった。 ソヨグの気配が消えた後、ミナトはサクモの身体を横たわらせてもう一度、医療忍術を試みるが、チャクラが不足して、出血を止めるコトが出来ない。 「サクモさん…っ!どうして…!こんなコトを…!」 残り少ないチャクラでミナトは必死に止血しようとしている。サクモはゆっくりと手を伸ばしてミナトの手を握った。 「ミナト……ああ、そうか……お前も…時空間忍術を………そうか……お前は…未来の……」 「サクモさん!」 ミナトのチャクラを止めながら、サクモが声を出した。 「…時空を飛んで来たのなら、もう分かっているだろう?波風ソヨグは木の葉を出て行く…お前は…火影になる…良いな。」 呼吸の荒くなっていくサクモが必死に言葉を続けている。 「何を言っているんですか!サクモさん!」 「アイツは、お前を火影にして裏で里と操ろうと考えていたんだ…お前がソヨグに恩義を感じ、捨てられないコトを知っていたから……」 「………父さんが…?」 「ああ。お前を操って他里を攻めさせようとしていた…そして、ゆくゆくは火の国を滅ぼそうと……戦争で全てを失った男だ。裕福な国が許せなかっただろう… だから、お前を拾って、この里に育てさせた…復讐しようと考えていた…」 「……そんな………」 「オレはそれを気付いていた…ソヨグはオレを相当嫌っていてなぁ…あいつはオレが憎くて邪魔で…オレがいるとミナト、お前を操れないと感じただろう。ソヨグは上層部と組んで裏で、今回のオレの任務を操り、仲間を助けさせるように仕向けた。」 サクモの話にミナトは驚きを隠せなかった。義父のソヨグがそんなコトを考えいたとは。サクモを追いつめた本人だったとは。 「そんな…そんなコトって……!オレは…っ!」 「ミナト、お前のせいじゃない……オレは知っていた…こうなるコトは予測していた。」 眼を閉じて、サクモはミナトの手を強く握った。 「…サクモさん!」 「ミナト、良く聞くんだ。オレは今、時空間忍術で未来へと飛んでいた。」 その言葉を聞き、ミナトは合点が行く。一般人のソヨグにサクモを刺せるワケがなかった。しかし、重症を追ったサクモ。 それは今のミナトのように時空間忍術でチャクラ不足で動けない時に刺されたとしか考えられなかった。 「ソヨグに刺されるコトも知っていた。オレが今、ココで死ぬことも知っていた。」 「そんな…!」 「だが、戦災孤児で身寄りのないミナトの義理の父親…一般人が忍びであるオレを殺したとあっては、木の葉の名誉を傷つけ、里の評価を落とすコトになる…そして、罪人の息子となれば、ミナトの火影への道も経たれる。だから、オレは自死するように見せるんだ。」 サクモの言葉を聞き、ミナトは震えながら叫ぶ。 「そんな!オレなんかの為にどうして!オレは火影になんてならなくても…!!カカシは…!」 ミナトの叫びに答えるようにサクモは眼を開けて答えた。 「……この先、カカシは辛い人生を歩むだろう。父親が自殺したとされて、思い悩むだろう…でもカカシは大丈夫…アイツは母親に似て強い…いずれ、大切な仲間から大事な宝物を受け取り、大きく成長する…そして、木の葉の未来を担う忍びになってくれる……から……」 「……サクモさん!」 サクモの話はミナトも知っている。カカシは思い悩みながらもしっかりと立ち上がる。木の葉の未来を担う忍びになる。大切な親友のオビトから、写輪眼を譲り受けて。 「………未来を見た、オレが言うんだから、間違いない…お前は火影にならなければ、ならない…この里を…木の葉を守る為……みんなを…カカシを…守るんだ…それがお前の使命…あの子をこの世に誕生させるため…この世界を救う…あの子…お前の息子の為にも…」 「………サクモ…さん?何、言って…?」 ミナトはサクモの言っている意味が分からなかった。しかし、ミナトは満足した表情見せる。 「…これ以上はもう…言うコトはない…後は自分で見て来るんだ…ミナト……いいか、ミナト、明日、苅られると分かっていても、黄金の稲は生きるコトを諦めたりしない…それを忘れるな…」 「そんな……サクモさん!」 「そして……これだけは……信じれ…くれ……オレも……お前が大切…だった………」 ミナトの手を握っていたサクモの手がゆっくりと離されていく。その時、ミナトの身体に先程、感じた浮遊感が漂って来た。 「サクモさん?…そんなっ!サクモさん!…こ、こんなっ!こんなコトって…っ!」 ミナトは浮遊感を感じながら、サクモが息を引き取る瞬間を看取った。その時、時空間忍術が解け、元の時間に戻ってしまった。 ++ 「サクモさんっ!サクモさん…っ!」 時空間忍術が解け、ミナトは元の時間へと戻って来た。サクモの最後を看取った事実を受け止めきれず、印を結んだ自室にてミナトは泣き崩れていた。そのミナトの異変に気付き、お腹の大きなクシナが現れる。 「ミナト?」 泣き崩れているミナトにクシナはそっと近づく。 「………事実を知ったって……もう、ココにはアナタはいない…!サクモさんっ!ボクは二度もあの人を…永遠に失った…」 クシナに抱きつきながら、ミナトは泣き崩れるしか出来なかった。 それがカカシから巻物を受け取った夜の出来事だった。 ++ 「三ヶ月、初めてサクモさんが考案した時空間忍術を使った時は、はっきり言って、混乱してました。だって、ボクにはショックが大き過ぎた。サクモさんを追いつめていたのは、ボクの義父だった…しかも、サクモさんが死を選んだのは、ボクの為だった。ボクを火影にする為に……あえて、義父の刃を受けたんですから。」 「……ああするしかなかった。オレにはな…」 「そして、今なら、少しは整理が付きましたよ。ボクもあれから、また時空間忍術を使った。そして、全てを知りました。」 「………そうか……」 「ボクが火影にならなければならないのは…明日、うちはマダラによって口寄せされた九尾が襲来するからだ。」 木の陰に隠れている人物に向かって、ミナトはゆっくりと話し掛けている。 「………………」 「そして…ボクの息子が…明日生まれるナルトが、運命の子とされているコトも。」 「……………」 「そして今、ボクの眼の前にいるアナタは、ボクが初めて時空間忍術を使ったあの時に、逢いに行ったサクモさんですか?」 「………そうだよ。」 木の陰に隠れていたサクモがミナトの前に姿を現した。ミナトは焚き火の前に静かに寝息を立てているカカシに視線を向けた。 サクモも同じようにカカシに視線を向けた。 「……カカシはもう15歳になりましたよ。」 「………そうか……大きくなったな。」 カカシを見つめるサクモの眼は子供を愛しく想う、父親の眼差しだった。その眼差しを見つめているとミナトは胸が熱くなる。 永遠に失ったと思ったサクモが今、目の前にいる。ミナトは泣き出したい気持ちになった。 時空間忍術を身に付けたミナトは、未来に飛び、様々なコトを知る。自分とクシナの子供…ナルトが「予言の子」となるコトを。 そして、木の葉を恨むうちはマダラによって九尾が襲来するコトも。 その為に、ずっとチャクラを貯め続けていた。今日の最後の任務もチャクラを使わなかったのは、明日の決戦に備えてだった。 木の葉を守り、ナルトの中に九尾を封印し、その九尾の力をナルトに還元する。 そして、もっと先の未来。 ナルトが「予言の子」として、世界を救う為にその封印した九尾の力を使うコトも。 しかし、ミナトには一つだけ、分からなかった。 「でも、どうして?今日、この時にアナタは現れたのですか?」 一つだけ、ミナトに分からないコト。 それは、サクモが最後の力を振り絞って今、この時に現れたコト。この術が解けた時、サクモに待っているのは波風ソヨグの刃だ。 それなのに、何故、最後のこの時に、自分の前に現れたのか。ミナトにはそれが分からなかった。 「………言っただろ?オレもお前が大切だったって。」 そう言いながらサクモがミナトに近づいて来た。真正面から向き合い、サクモは優しくミナトの頬にその手で触れた。 「………サクモ……さん………?」 ミナトはサクモの言わんとしてるコトが分からず声が震えていた。 「…オレはもうじき、死ぬ。その前に…最後の時はお前にやろうと思っていた。」 「……………」 「だって、お前、オレが好きだったんだろう?あの稲穂の前で、手を握った時から。」 そう言ってサクモが優しく微笑む。その笑みを見て、ミナトは何も言えなくなり、視界も歪んで来る。 サクモの育てた黄金の稲穂を思い出す。二人で手を握って見つめた風景。 稲達は明日、苅られると分かっていても、その成長を決して止めたりはしない。最後の最後まで生きるコトを諦めないあのミナトの髪の色と同じ黄金の稲穂を思い出す。 あの時、ミナトは幸せだった。これ以上にない程に幸せな一瞬だった。 それを思い出すと目尻から次々に涙が溢れ、優しく微笑むサクモのカオが見れない。 「……………知って……知ってたんですか…?ボクの…気持ち……」 頬に触れたサクモの手にミナトは自分の手を添える。サクモは優しく頷いた。 「………ああ。応えてやれなくて、すまなかった…でも、今のこの時はお前にやるよ。ミナト。」 その言葉にミナトは全てが満たされた気がした。堪えきれずに両手をサクモに伸ばして抱きしめる。サクモは抵抗せずに大人しくミナトに身体を預けた。 「…………サクモさん………嬉しい。」 ミナトの瞳からは次から次へと涙が溢れ流れていく。 四代目火影・波風ミナトも明日、運命の日を迎える。 その前にミナトはずっと恋い焦がれていた男の最後の時間をもらうコトが出来た。 サクモは自分のコトよりも、誰よりもミナトを愛してくれていた。自分が慰霊碑にその名を刻まれるコトも不名誉を永遠に受けるコトも構わず、サクモはミナトを守ってくれたのだ。 ミナトはその事実に胸を打たれた。 永遠に失ったと思った相手がサクモがこの腕の中にいる。ミナトはこれ以上にない程に幸せだった。 End 2009.06.15 突然ですが、「闘う魚」五周年おめでとうございます! と言う、コトで!お約束通りにミナサク進呈させて頂きます! お祝いの品の割に、暗い話で申し訳ないんですが…(汗) 意味ポーン??な話ですみません〜(>_<) 四代目のコトを書くとき、どうしても時空間忍術が抜けません!(汗) だって、時空を超える!なんて美味しい術だ!(笑) ついでに、今回はサクモさんも使える設定にしてみました(汗) サクモさんも使えるから、カカシの万華鏡は時空間移動なんだよ〜みたいな 細かい設定があったりして(あはは) こんな感じのミナサクでした〜。ちゅーとかしてないけど(あはは) では、これからも闘う魚に通い続けます!ありがとうございましたvv |
プラウザを閉じてお戻り下さい。