高花ろく様の映画話
映画・完全捏造話(笑)


☆カカシ先生が卑留呼さんの元に到着するちょっと前からの捏造話です(笑)




「さぁ…おいで…ボクの友達…はたけカカシ…」

卑留呼が手を掲げてチャクラを放つ。その目には狂気が宿る。
卑留呼が待つ、はたけカカシはすぐ、そこまで来ている。
十七年前に施した時限式の術に操られ、自我を失ったはたけカカシがもうすぐやって来るのだ。

「天地人の条件が揃う時、五つの血継限界を取り込み、わたしは無敵・最凶の忍びとなる…!!」

狂気の含んだ瞳を嬉しそうに歪ませる。金環日食ももう少しで始まる。長年待ち続けた願いが成就する。


「……フフ……フフフ…早く、会いたいなぁ…はたけカカシ…いいや、はたけサクモ…」

はたけカカシの気配をチャクラで追いながら目を閉じて卑留呼が思い出すのは、遠き日に別れた、はたけサクモの姿。

「サクモを死に追いやった木の葉……決して…決して許さぬ……木の葉は誰もサクモを救わなかった…!
許さぬ…そして……サクモの心を奪った四代目火影も…!」

開いた眼は血走り、狂気が一層滲んでいる。



卑留呼は忍びの才のない非力な自分に憂い、強さを望んだ。強大な力を手に入れ、三忍に並ぶ忍びになりたいと願っていた。


それは自分と同じ髪の色で、その三忍を越える忍びとなった男の側で生きたいと願っていたからだ。
その男は誰よりも忍びとしての強さは持っていたのに、心は誰よりも優しく弱かった。卑留呼はその男の心を守りたいと思った。
それを支えるのは自分だと信じていた。その為に強さを欲していた。

だが、強さを手に入れる為、禁術を開発しているコトを里の上層部に知られ、里を追放されるコトになった。


完全な強さを手に入れ、その男を迎えに行く。それを支えに卑留呼は里から逃げ続けていた。


だが、卑留呼はその逃亡の途中で、その男が命を絶ったコトを知る。

誰よりも里を愛し、誰よりも里の民や仲間を愛していた男。任務遂行と仲間の命を天秤に掛けられ、任務を放棄してでも仲間の命を救った男。
それなのに里はその男を糾弾した。精神的にも肉体的にも責め続け、男を死に追いやったのだ。


卑留呼はそれが許せなかった。里を激しく憎んだ。そして…その男の心を奪ったとされる男を憎んでいた。



「でも…もう、その四代目はいない…カカシを追っている木の葉の忍びもやがては我がしもべに始末される…ああ、カカシ…久しぶりに会う君は
どんな姿になっているんだろう…どれほど、サクモに似ているのだろうか…もう、ボクを邪魔するものはいない…フフ…フフフ……ハッハッハッー!!」

すでに術に取り込まれた四体の血継限界を前に卑留呼は両手を高らかと上げて笑い声を響かせていた。
それから暫くすると巨大は扉が開かれ、そこには卑留呼の術に操られたはたけカカシがユラユラと身体を揺らせて歩いて来た。

「…!ついに…!ついに来た…!カカシ…っ!」

虚ろな瞳でカカシがゆっくりと前に進んで来る。卑留呼は掲げていた両手を下げ中央でカカシが近づくのを待つ。
カカシがその中央に立ち、歩みを止めると卑留呼は手を広げてカカシに抱きついた。

「…ああっ!待っていた!待っていたよ…!カカシ…いいや、サクモっ!」

しがみつくようにカカシに抱きついて卑留呼は叫ぶ。

「サクモ…君は別れた頃の姿のままだね…!これから、わたしと君は一つになる…!わたしはもう一人じゃない…!誰にも邪魔なんてさせない…!
もう君に憧れるだけの非力なわたしではない…!」

血を吐くような声を上げ、カカシから離れて頭を上げて真上を見ると金環日食が始まる。

「…さぁ、これでわたし達は無敵だ…!」

両手を伸ばし、『鬼芽羅の術』の印を結び始めた。丁度、その頃、外では、カカシを追ってナルト達が卑留呼の部下と戦い奮闘してた。
術で操られているカカシはその状況を知るコトは出来なかったが、綱手に施された時限式の術が、今まさに発動されようとしていた。
通常の写輪眼が次第に万華鏡の形に移行し始める頃、印を結んでいた卑留呼が異変を感じる。

「……カカシ…?」

急いでカカシに近づくと万華鏡写輪眼が発動され始める。時空の歪みが生じ、うねりが目に見えるようになった。

「…なっ!何を…何をするんだ…!?カカシ…!?」

意識の無いカカシはその場で倒れそうになったる。地面にその身体が叩き付けられそうになった時、口寄せか何かの術が使われた。
煙幕が起こり、卑留呼はカカシの背後に何者かの気配を感じる。

目を凝らし、カカシのいる位置を見ると煙と共に現れたのは、カカシと同じ木の葉の額宛をし、火影の羽織を身につけた黄金の髪の持ち主だった。


「お、お前は…!」

「あはは!やっぱり、カカシに時限式の印を付けてたのは…卑留呼さんだったんだー♪」

倒れそうになるカカシを抱えて、突如現れた金髪の男は軽快な声を出す。その姿を見た卑留呼は驚きの声を上げる。


「き、貴様は…!四代目…!四代目火影…波風ミナト…!」


決して現れるコトのないハズの人間が目の前にいる。この男はすでに死んだハズだ。と、卑留呼は動揺を隠せない。


「いやー、昔…カカシにね、妙な術の気配を感じてて…それで、気になってカカシの中にオレの精神体を封印していたんだよね…
そしたら、こんな状況になってんじゃない…いやー、もうビックリ!」

ニッコリを笑顔を浮かべてミナトが言った。卑留呼は身体を震わせながら、首を振って声を出す。

「…な、何故だ!何故、貴様がココに…!!いいや、貴様が現れようが関係ない!カカシを取り込み、もう鬼芽羅の術は完成する!貴様には、もうサクモは渡さない!」

「何、言ってんの?貴方、カカシをサクモさんだと思ってるの?」

怪訝な表情でミナトは卑留呼を睨む。

「これはサクモだ!わたしのものだ…!もうお前には指一本触れさせるものか!」

印を結び、ミナトに攻撃を仕掛ける。しかし、ミナトとカカシの前で全ての攻撃が弾かれる。

「何だ!?結界か…!?」

ミナトを睨みつけ、再び印を結び始めようとした。それを見て、穏やかだったミナトが一遍して強い眼差しで卑留呼に向かって言う。


「あまり、木の葉を舐めるなよ。」

「…なっ!」

その言葉に卑留呼は一瞬、動きを止める。


「オレはね、貴方のこのくだらない術に抵抗するのなんて気なんてないーの!ったく…もっと深く考えれば良いのに、カカシは責任感じで突っ走って…
カカシは、貴方がサクモさんを想っていたのを知っていた。だから、それに応える為に、命捨てる気になってさ…カカシ、お前がこうして簡単に命を投げ出せば、
どれだけの人が哀しむと思ってるの?」

卑留呼から視線を外し、抱き抱えたカカシのカオを見つめながらミナトは続ける。

「こんなの知ったらサクモさんだって泣いちゃうし、オレも嫌だよ。オレはサクモさんに泣いて欲しくない…オビトも怒るし、リンだって…
それに…ナルトも必死になって追いかけて来てる…それだけじゃない。お前の大切な、黒髪のあの子だって、きっと哀しむ。」

ミナトの最後の言葉を聞いて、カカシの身体がピクッと動いたような気がした。ミナトはカカシを抱き抱えて再度、卑留呼に視線を向ける。

「…ま!オレが手を下さなくてもね!あの、今からすっごい勢いで凄いのが来るから!オレやカカシ以上に諦めの悪ーい、ど根性忍者が到着しますんで!
そんで、その子に思いっ切り、やられちゃって下さい!それとサクモさんは未来永劫、貴方には渡しません!それじゃ!」

ミナトはニッコリともう一度、微笑んで敬礼するように手を動かした。そして、最初に現れたように煙幕と一緒にその姿が消えていく。

「な…!貴様…っ!」

ミナトの姿が消えるコトにも驚きを隠せない卑留呼だったが、それと同時に倒れそうになったカカシが一人で再び立ち上がる。
意識はないままだが、その背後にある時空の歪みは大きなうねりとなり、万華鏡写輪眼が完全に発動された。卑留呼はそこに現れた異空間に吸い込まれそうになる。

「…なっ!何をした…!何が起こったー!!」

突然、吸い込まれる卑留呼。それに合わせてカカシの身体も、万華鏡写輪眼の術に吸い込まれて始める。

卑留呼は理解出来ていなかった。
突然、術で意識がないハズのカカシの写輪眼が発動した。そして、四代目火影の精神体が現れ消えた…この事態は予想範囲には無かったコトだ。


…な、何故だ!……!何が起こって…!!



卑留呼は異空間に吸い込まれそうに混乱する頭の中で、ミナトが言った言葉を思い出す。



『今からすっごい勢いで凄いのが来るから!オレやカカシ以上に諦めの悪ーい、ど根性忍者が到着しますんで!』


それは誰だ?誰のコトを言っている…!?



卑留呼の思考がそこで止まった時、扉が破壊され、何者かがこの部屋に入って来る。必死で呼びかける悲痛な叫び声と一緒に。



「カカシ先生ーっ!!」



扉の破壊される音と共に、ナルトが異空間の歪みの中に躊躇なく入り込み、流され消えそうになるカカシの腕をしっかりと握った。

「…もう…!絶対に離さねー!」

ナルトは影分身達に引っぱられ、カカシの身体を無事に異空間から取り戻す。その手にしっかりと師匠の手を握り締めていた。




++




カカシは混濁した意識の中、ナルトの呼ぶ声が聞こえた気がした。そして亡き師匠の声が聞こえた気がした。


『お前の大切な、黒髪のあの子だって、きっと哀しむ。』



そうだ…オレがこのまま、死んでしまったら…あの人が…イルカ先生が哀しみますね…


カカシの脳裏にイルカの泣き顔が横切った。それを考えるだけでも、胸が引き裂かれそうになる。



先生…オレ、何て馬鹿な真似を……オレもイルカ先生には、泣いて欲しくない……あの人を置いては逝けない…



カカシは師匠の声に答えるように心の中で呟く。すると遠い場所から、自分の名を必死で呼ぶ声が聞こえた。



「先生!眼を覚ましてくれよ!カカシ先生…!」



…この声は……ああ、そうか……



カカシは意識を取り戻して行く。そして、最後に聞いた師匠の言葉も思い出していく。



『あの、今からすっごい勢いで凄いのが来るから!オレやカカシ以上に諦めの悪ーい、ど根性忍者が到着しますんで!』


…そうだ、ナルトがいる。ナルトとなら…この人を…父の面影を追い、父を愛した卑留呼さんを救ってくれるかもしれない…



カカシは拳に少しずつ力を入れる。重い瞼をゆっくりを開かせる。目の前の光り輝く希望を見つめる為に。

「先生っ!カカシ先生…!!」



「………おはよ……」




(完)

2009.09.03

そして映画に続く!(完)みたいな!(笑)



映画での台詞を入れたつもりですが(卑留呼叫ぶ声とか?ナルトの台詞とか?)一度しか見てないので間違ってるかも〜(汗)
そして、卑留呼→サクモで行ってみました!卑留呼さん、こんな理由があったんだよ!(完全捏造/笑)
でも、サクモさん死去・卑留呼追放の時間軸が微妙にズレてる気がするんですが、それはスルーしてやって下さい…(汗)



ろくさんから頂きました!
こういう映画だったんですよ!
一気に萌映画になりました!!
そして、映画部屋開設とあいなりました〜。
ろくさん、ほんとうに、ありがとうございます!

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