『成長』















カカシの物心ついた頃に、イルカの事はサクモから伝えられていた。


サクモが自然にイルカを受け入れていたのを見ていたからだろうか。


カカシもイルカをイルカとして受け入れてくれた










「イルカ兄ちゃん!」


樹に凭れかかり、外を見つめていた青年に声を掛ける。


身体を起こし、ゆっくりと振り向き笑う、その笑顔に心が温かくなる。


カカシは、イルカの腰元に引っ付くように飛びついた。






「おわっ。こら、カカシ」


「えへへ。イルカ兄ちゃん、おはよう!」


「おはよう。」


「イルカ兄ちゃんはいっつも早起きだね。何してたの?」


「さっき、サクモさんの見送りをしていたんだよ」


イルカが見ていた方に視線を向けて。


「父さん、任務に行っちゃったんだ…。俺もお見送りしたかったのに……」


4歳では見せることの無い表情をして。


寂しそうに。


切なそうに、日の昇った里の門の方角を見つめる。


そんなカカシの頭をグリグリと撫でて。


「ほら、カカシ。朝御飯食べたら出かけるから。サクモさんが作ってくれたご飯食べておいで」


「はーい。今日は勉強しないの?何処に出かけるの?」


子供らしい笑顔でイルカを仰ぎ見る。


イルカは、カカシの背中を押して家の中へと入るように促す。


「今日は、鬼ごっこをしようか。お昼からは食べられるもの、食べられないものを


見分けれるように勉強もしような」


「じゃあ、野いちごのあるあの場所に行くの?」


野いちごはカカシのお気に入りで。


よく、勉強の合い間に摘み食いしていたりした。


「ああ。今日はサクモさんがお弁当を作っておいてくれたから、それを持って行こう。


夕方まで野山で勉強するから、朝御飯しっかり食べるんだぞ」


「うん!早く食べてくるから。イルカ兄ちゃん、ちゃんと待っててね!」


「急がなくて良いから、しっかりと食べておいで。出かける準備も忘れずにな」


「はーい」


家へ向かっていたカカシが振り向き


「イルカ兄ちゃん、鬼ごっこってイルカと?」


「『イルカ』 と、だよ。先日、約束しただろ?」


「うん!」


「勉強は 『イルカ兄ちゃん』 と、だけどな」


「イルカ兄ちゃんの勉強は、判りやすいし楽しいから好き。


でも、鬼ごっことかはイルカとする方が楽しいの。


友達が出来たみたいで嬉しいんだ」


頬をほんのりと染めてへへっと笑いながら、縁側から家へ入り、台所へと消えてゆく。










サクモの方針でカカシはアカデミーへは通っておらず、また里から外れた所に家が建っているせいか、


カカシには同い年の友達がいない。


勉強の帰り道、遊んでいる里の子供達をじっとカカシが見ていたのを見て。


イルカは遊戯の時は、カカシと同い年くらいの姿に姿を変えてみた。


それからは遊戯の時は、カカシと同い年位の姿になり、『イルカ』 と呼ばれ。


勉強の時は普段通りの青年の姿なので 『イルカ兄ちゃん』 とカカシに呼ばれるようになり。


日を重ねるごとにカカシの笑顔が増え始めてきた。










カカシが笑っているのが嬉しい。


カカシの笑顔につられてイルカまで微笑んでしまう。


カカシが笑顔で過ごせる為にも、出来る限りのことをしようと、そう思った。















そして






どうか、このまま何事も無く過ぎて行きますように、と………。
















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