休日なんだから

「紅葉谷に行こうよ。今が見頃だよ」
三連休の初日、満面の笑みで、波風ミナトが言う。
はたけカカシは、小さな白い顔に、不満を表した。
「紅葉谷、こわいよ。大蛇丸様が言ってた。紅葉谷は、昔、戦場でたくさんの忍が死んで、その死んだ忍の血で葉が赤くなるようになったんだって」
「ん、大蛇丸様は、なんだってこどもに、そんなこと言うかなあ。違うよ、カカシ。葉が赤や黄色になるのは、温度の関係でね」
即席に理科の授業を始めたミナトの言を、カカシはきちんと聞く。
そんな二人の姿を、はたけサクモはゆったりと笑んで見つめていた。
三人そろっての休日、しかも連休など、ずいぶんと久しぶりのことだった。
この若さで上層部に属しているミナトが、無理やりにもぎとってきたものであろうが、そのへんはサクモもカカシも追及しない。
「ね、サクモさん、行きましょう。きっと綺麗ですよ。ん、サクモさんのほうが綺麗ですけどね」
さっさとサクモを味方につけようと目論見、頬に口付けたミナトが、不意に真顔になった。
「サクモさん、熱いですよ」
ととと、とやってきて、小さな手をサクモの額に当てたカカシも、声を大きくする。
「ほんとだ。父さま、お熱がある!」
「紅葉谷、却下」
言うなり、ミナトはサクモを横抱きに抱きあげた。
「カカシ、シーツ、新しいの出してくれる?」
「うん」
一大事、とばかりカカシは寝室に走る。
「すみません」
サクモは小声で詫びる。
「なぜ、あなたが謝るんです?」
ミナトは、青い瞳を丸くする。
「休日の予定を台無しにしてしまいました」
「あー」
ミナトの眉が下がる。
「休日って曲者ですよね。今日、休みだからいいやって、昨日の晩、やりすぎちゃいました。おれのほうこそ、サクモさん、ごめんなさい」
発熱のせいではない赤味を、サクモは頬にのぼらせる。
どんな紅葉よりも綺麗ですね、とミナトはもう一度、そっとその頬に接吻した。

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