貧しい時代のもっとも貧しい装飾

斉藤大地は、真野薫より強く美しい男を、他に知らない。

ガラス管の先が、ゆっくりと大地の後孔に差しこまれた。
「いやっ、いやあ。入れないでえ」
両手を、頭の上で一つに縛られ、仰向けにされて両足を肩までつくほどに広げられ、浣腸されている大地は、泣き声をあげて、身を震わせた。
びしり、と大地の頬が鳴った。
「いやだと? 嘘つきが。前をこんなに固くして。浣腸されるのが大好きなくせに」
掠れて低い、凄味のある男ー真野の声。
「あん、あんっ。苦しい」
さらに何度か、頬を鳴らす。
「あ、あん」
痛みと苦痛に、大地は吐息を洩らす。
「ほら、いいんだろう。おまえは苦痛と屈辱が、なにより感じるマゾ奴隷なんだからな」
「ああん」
屹立したものを撫でられ、大地は身をよじる。
「さあ、言ってみろ。浣腸されるのが大好きです、もう一本下さいとな」
苦しさと恥ずかしさにさらに涙を流しながら、大地は言った。
「あ……、浣腸されるのが、好き……、して、下さい」
いったん口に出してしまうと、狂ったように言葉がほとばしり出た。
「好き、好きいっ。浣腸して。いっぱいしてえっ」
真野は、満足そうにガラス器の先を、大地のアナルに挿入した。
「あっ、ああん。かおる。かおるう」
しばらくして、大地は身悶えを始めた。
限界がきているのか、冷や汗が滲んでいる。
しかし、真野は大地の戒めを解いてやらなかった。
「お、おねがいっ。トイレに行かせて。で、出るっ」
大地の哀願に、真野は冷笑で答えた。
「出せばいい」
「かおるっ」
大地は、大きな眼を驚愕に見開いた。
今まで、浣腸で責められることは多かったが、真野の目の前で排便させられたことはなかった。
「かおる、かおるうっ」
大地の絶叫にも、真野は煙草を吸って笑みを浮かべるばかりである。
「恥ずかしいところを見られたいんだろ? いちばん恥ずかしい姿を見せろよ、大地」
めったに呼ばれない名を呼ばれ、大地の胸は高鳴った。
それと同時に、肉体が悲鳴をあげた。
「ああああああああ」
両足を最大限に開いた格好でひり出すのは、痛いほどの屈辱だった。
だが、その焼け付くような恥辱と苦痛のなかに、しびれるような歓喜が混じっている。
真野が見ている。
大地の、人間として最も恥ずかしい姿を見ている。
命の限りを尽くして愛する真野が。
「ああ、見てっ、見てえっ。俺の、いちばん恥ずかしい姿をもっと見てえ」
大地は、叫び続けた。

斉藤大地は、真野薫より美しく強い男を知らない。
そして、こんなにも自分を愛してくれる男も。

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