片恋

スクアーロのまっすぐな銀髪が寝台からこぼれた。
「んんっ」
鼻から抜けるような甘い声も、こぼれる。
ひたひたとした幸福を感じながら、ディーノは一つになるために身体を動かした。
ふいに、スクアーロが笑った。
「……笑うとこじゃないだろ」
ディーノは呟く。
スクアーロはすぐに、いつもの物騒な顔つきに戻った。
ディーノは、スクアーロの言葉を待った。
「思い出し笑いだぁ」
しぶしぶ、といった様子で、スクアーロは言った。
また、ディーノは待った。
今度は、スクアーロの語は続かなかった。
スクアーロの胸にディーノは突っ伏した。
無言こそが、ディーノに教えてくれる。
スクアーロは、ザンザスに関する何かを思い出したのだ。
思わず、笑みがこぼれるような何か。
日常的な、しかし、スクアーロ以外には、血が凍りつきそうな恐怖を呼ぶ日常的な何か。
他の男の腕の中でも笑ってしまうような、何か。
セックスをして嬌声をあげていても、ディーノよりザンザスのほうが近い。
そこにザンザスがいなくても、スクアーロはいつでもザンザスと共に在る。
いないザンザスを想って、無邪気に笑う。
泣いていいのか、笑っていいのか、ディーノにはわからない。
嘲笑するところ、か。
動きを止めてしまったディーノに、スクアーロが焦れた。
「真面目にやれぇ」
義手でないほうの指で、ディーノの髪を引っ張る。
脅すように、実際、脅しているのだろうが、そう言われても、もうディーノは交尾中の雄には戻らない。
ばかみたいに、戦う本能ばかりを充たしている雄のくせに、こんなところでだけ、ひとにならなくてもいいだろう、とまた泣きたく、いや、笑いたくなる。
いよいよ怒ったらしいスクアーロは、仏頂面で寝台を降り、シャワーを浴びにいった。
手足のバランスが良い、細すぎるほど細い身体も。
さらさら揺れる長い銀の髪も。
脳裏に思い描いただけで、普段なら下半身が逆流しそうになるのに。
肝心な、今。
ディーノは顔を枕に押しつけ、小さく声を立てて、笑った。

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