船上で

「料理は愛情クソッタレだあ」
今日も、サンジは、元気に陽気に愛情深く、皆の料理を作っている。
どんなに航海技術や造船技術があがっても、悪魔の実を食べても(いや、食べたからこそ)、板子一枚下は地獄、は変わらない。
命は、板の上一枚。
人は食えなければ死ぬ。
サンジはコックとして、生物としても人間としても、命の糧を司る。
「さあ、食えー!」
いただきます、の合唱が終わるか終わらないかのうちに、海賊たちは、がっつき始める。
「うめえ、うめえぞお。今日もうめえなあ、サンジ!」
ルフィは、単純だからこそ純粋な賛辞を惜しまない。
「当たり前よお。誰が作ってると思ってやがんだあ」
言葉は荒く、だが、心から嬉しそうに、サンジは笑う。
他のクルーも、素直な賞賛をサンジに浴びせる。
寡黙な剣士を除いては。
「おいおいおい、マリモ頭。たまにゃあ、美味かった、ご馳走さん、コック様、くらい言えねえのかよ」
サンジが絡む。
実は、サンジは、誰よりもゾロに褒めてほしいのだった。
むっとした顔で、ゾロはサンジの耳たぶをひっぱる。
「ててっ。何しやがる、クソ剣士」
「おまえの料理より、おまえ自身のほうがよっぽど、うめえんだよ、エロコック」
低く、低く、耳に落とされた声は、サンジ以外には聞こえなかった。
真っ赤になって、サンジが皿を落としたので、ナミとロビンはおおよその内容を察したかもしれないが。
「勿体ねー。肉ー。肉ー」
「三秒ルールな。三秒以内に拾って食ったら、汚くないんだぞ。ばい菌もつかないんだぞ。ドクターも言ってた」
落とした料理は、何事もなかったように、ルフィとチョッパーの腹におさまったから、食材の無駄は出なかった。

料理は愛情。
愛情は料理。
地獄の一枚上でも、青春と恋は消費される。

リクエスト、ありがとうございました!
五味様に捧げます。

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